「病める鼠」

 恐れふるえしこの心…
 黄色な眼におびえてる
 月は黒猫の眼玉
 黄色に丸く、
 黄色に細く
 なにものかに常々おびえる心見透かして
 けらけら笑ふ
 けらけら笑ふ
 黄色な眼玉 梟の眼玉
 鼠を殺す自然の眼玉
 消毒薬の匂ひ
 霊安室にたち込めて
 鼠のむくろは咽せび泣く
 丸窓からのぞく夜の月
 黄色に
 黄色に
 心を病んだ鼠の眼
 たった一人で立ち往生
 後にも先にも転べない
 黒猫、梟、のら鼠。
 血走った眼が錆びた色
 黄色、黄色、真っ黄色。

「病める鼠」

「病める鼠」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-08

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