「いつかの街」
あのうつくしい街へ帰りたい…
春のあわ雪
蛍の涙
血潮滴る彼岸花は
雪をかむりて
本能のままに舞う
花と草木と獣たちの山
底澄んだ深い青藍の川
赤い椿の花びら溶かした櫺子にさした
白と碧の絞りの綿飴花…
鳥は淡く虹に輝き
震える手を抱きしめ
曳いてくださった優しいあの瞳
なつかしい…
あゝ今すぐにでも帰りたい
生れる前に生きてた街
胎の記憶より古い思ひ出
迎いに来て
水色の玉結びつけた銀の糸の腕輪形見に
暗い水の中で彷徨う身は…
「いつかの街」