「おみなごきゃろる」

 静寂の間に…
 女子(おみなご)きゃろるは眠りたる
 立派な一段ベッドに
 羽毛布団
 ふあふあに埋れゆく
 きゃろるは微笑んでいる
 寝ながら微笑んでいる
 その口元の干涸びぬこと
 その目元の窪まぬこと
 その頬の潮に傷まぬこと…
 女子きゃろるは夢を見る
 ひとりきり春宵(はるよい)の夢を見ている
 そして鳥の顔した奇術師が
 きゃろるの頭をそっと撫でた
 きゃろるはねだりきれなかったご絵本にぎって
 すやすやと寝息の凪たる
 君の瞳がぱっちり開いたなら
 また日傘さして歩きに行かう…
 きゃろる
 女子きゃろる
 鳥の腕した奇術師は
 きゃろるの頭をも一度撫でり

 きゃろるのずっと微笑んだ顔…

 あたたかな春の夜
 風は散花を水面へ運ぶ

「おみなごきゃろる」

「おみなごきゃろる」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-01-26

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