「木のある庭」
雀鳴きの声
ちゅっちゅっちゅっ
烏は遠くへ行けばいい
雀踊りの羽の音
ぱたぱたはたはた
空回りだってかあいらしい
雀の頭だきしめて
花は枯れても花は死なぬ
自ら降らせた夕立に
窶れしおれた守り花
此処は雀のしるお庭
緋鯉も金魚となりにけむ
魚のうろこはすももの果実
吐く泡は情けの滴一心留めた薄紅雪
散る水の再び空に溶けむ
ガラスの綿雪町染めて
音も無しあの薄汚れた町ども
白菊の緑の茎黒い根は
幹より生えたる白桃の花に包まれり
幹はたちまち白に満たされ
誰も知らないふるさとの
幾百年の記憶具現す
「木のある庭」