「恋」
凍蝶の
月夜に崩れる光かな…
蝶が凍っている
雪のせいか
ホルマリンか
銀の光射して
弓張月
硝子をくだき
皴なる白い血はしり
割れた身体は地に砕ける
凍蝶の
光かむりて月の弓…
月の光は水の御手
川か湖か
あの山が注ぐあの山が湛える清らの水鏡
凍蝶の
震う破片は恋の悦
水面鏡は
凍蝶の一思いを知りて
涙をそそぎ口湿らしては
俯向く横がほの月に託した我が命
ゆっくりと…眠る。
凍蝶の
水に浮びて
溶ける
その身は雪で出来ていたのであろうか
行方は知れずとも
重なる微笑み
すり寄せた頬から
雫の鱗粉きらきらと…
真珠にもなれぬ銀の火粉は
水底の優しき砂となりて
「恋」