「鳥」

 鳥の翼
 音のみ水に響く
 さざ波に
 触れむとすれば
 湖面は川は静まりて

 鳥の翼
 はたたく残り香
 その細いくちばしより零るは
 音無き歌声
 雪解けの雫

 矢疵のあと
 濃い紅の溢れむがしたたりて
 洞穴にまろび
 大樹にうもれて
 やがて雪残る茂みに倒れる

 鳥の翼
 空気は揺れず
 しんしんと白雪の終らぬこと
 細眼にひらかれ
 がっくりと閉ざさなかった月色の瞳は
 末期の瞳温かい水のべエル冠りて
 なつかしき野の青波を見る

「鳥」

「鳥」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-12-16

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