「哀しい手」
誰かの手が彷徨う
哀しい手だ
小鳥の死骸を抱き
土に生える淡い花を撫で
愛しき方の頬に触れれば
冷えた手を爛らせながら何かを殺す
陽の恵みを加護としつつも
時には恐ろしくて震え止まらぬ
気高く
美しい
哀しい手だ
誰かの手が泣いている
寂しい手だ
寒空の川に映る空を見つめて
ひとり涙を零す寂しい手
その手からは夜な夜な螢が咲き飛ばう
雪の面影
月の映し身
ほのかに白く、山吹に
灯りてはたたく螢火淡く
一つ
また、一つ
ふらふらと覚束無げに飛んでいく
山を越えて鷹に守られながら飛んでいけ
あの哀しい手のもとへ
あの哀しい手のもとへ
夜の町は静かに更けゆく…
「哀しい手」