「水辺の桜の木」

 道端に体が落ちている
 いずれも細い、
 指、
 腕、
 脚、
 爪先…
 胴体から自然と離れたか
 それとも人にもぎ取られたか
 赤い血かよう白肌に
 透いて流れる命の音
 うす紅の体が
 ぼたぼたと黒い地面に伏している
 コドモよ手折るな
 桜の枝を
 桜に人は似合わない

 りんりんと泣くつめたい川が天を抱いた
 かなしい薄花の色に浮かぶ
 淡い桃色は
 朱鷺の羽染むる秘色(ひいろ)となった
 白い体を羽ばたかせよ
 月への飛翔
 山を巡って
 水に憩い
 眼をねむれば
 二匹の胡蝶が漂う湖
 雪の膚をそっと触れあわせ
 水辺に浮ぶほの淡い(ともし)の花
 一輪とても朽ちること無く

「水辺の桜の木」

「水辺の桜の木」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-11-10

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