「水辺の桜の木」
道端に体が落ちている
いずれも細い、
指、
腕、
脚、
爪先…
胴体から自然と離れたか
それとも人にもぎ取られたか
赤い血かよう白肌に
透いて流れる命の音
うす紅の体が
ぼたぼたと黒い地面に伏している
コドモよ手折るな
桜の枝を
桜に人は似合わない
りんりんと泣くつめたい川が天を抱いた
かなしい薄花の色に浮かぶ
淡い桃色は
朱鷺の羽染むる秘色となった
白い体を羽ばたかせよ
月への飛翔
山を巡って
水に憩い
眼をねむれば
二匹の胡蝶が漂う湖
雪の膚をそっと触れあわせ
水辺に浮ぶほの淡い灯の花
一輪とても朽ちること無く
「水辺の桜の木」