偽語
私という
強固な蓋が
埃を払う、
そう見間違うように。
本を並べる、
そんな作業にも
事務的な影が
意味もなく
付いて回れば、と
偽りと語り。
ガタ付きながら
表紙を摩り
開いて、見せては
改変をする、
狂おしい恋の
痛みから
安らかな死の
歩みまで
ポロポロと
これは、
こぼれ落ちる感覚。
首を回して
油を差すように
時間をかけた、
頁の重み。
泣いているの?
と、訊かれるまで
種々様々な、
固いベルが告げる
ご用件に対して
写真みたいな
懐かしさが、
映ずるように
微笑み。
それから
暫くと、
少しして
かつ、かつと
離れ出す。
つま先の長い
革靴と叩く、
床と床。
ものたちが、
日溜まりに溺れる
色に焼ける、
思い出という名の
そんな残酷に
告げる別れ。
それに相応しい
力ある言葉を
と、裁断し
人差し指を折り、
曲げる。
きっと、
正対すれば
美しく
何もかも、を
と
打つ。
砂時計は
逆さまになって、
なのか
元に戻して
使うの、
どちらなのか。
何故なら。
動きこそ
そのものの命題。
そう思えば、尚の事
分からなくなる
想い。
何度磨いても、
音が飛び立ち
声となって
返ってくるから
切れ切れに
追い、求め。
綴りの間違いも
正しき表現も
どちらにも
違う、
違うと
発する気になれない。
我にも返れない。
硬く、
赤い表紙の
中程にある描写。
魅入られた。
私も、
きみも。
好きになった、
誰もしない時間に。
忘れられない、
なんて生温い。
永遠に誓って
空いたカップと
箒で払う、理想と欠片。
現実の朝が
降り積もらせるものに、
添えられる。
予約と日時の、
真っ白な
視界。
その外から
どさっと優しく、
落ちた塊。
見惚れていた。
表現と一文の
簡素な顔と
その、代替性。
性分という
随分と、便利な言葉。
それを
だから、
この胸に仕舞う。
先に待つ、
といえば叶った
情景には
背中を向けて、
ただ、思い続ける。
着色が施され
二つとない形をして、
個に満ちた、
ふと、
なんて安らぎも
だから
我に返る、拘りをもって。
正し、壊す。
理屈にならない
そう、聴こえてくるまで。
きみのために
少なからずのこの語りを。
偽語