「秘密の舞踏」
風が舞って
木の葉を くるり
渦にまぜる
うす紅さした枯葉に
とうめいな水を注ぐ
人は皆ぶ厚い硝子窓の内に納まったらしい
此処には
誰もおらぬ
誰もこの秘密の舞踏を知らぬ
哀れひとすぢの赤血の如く
よく似合う口紅だけでもせめてと思ったのだろう
枯葉と見なされた若葉に
睦む冷やりとした水
互いに指を絡めては
ふた度離れじと微笑みの涙…
風は人を追いやった
氷の槍もて足ふみ鳴らす
猛る演武に人は縮こまるが
鳥は唄い 草木はうっとり眼を閉じる
紅い葉と水は祝されり
あゝ鬼面の風の瞳の澄んだこと…
「秘密の舞踏」