「童」
短く切り揃えられた前髪
おかっぱ頭の黒糸の髪は
ほつれて何処にかゆきそうな
細くあやうげ残したまんま
着物がよく似合う
卯月の淡い草を織り込めたのであろう
袂も裾も帯もかろく
音かろく跳ねまわる
童は手に水晶のっけて
腕へころがし
また指先へころがし
羽ばたく真似をすれば
水晶はひとりでにころころかろん
滑り落ちる予兆も無しに
童は水晶を奔らせる
毬をあげようか
紅地に水の糸をめぐらせて
山吹の花のこよりで縫いとめた手毬を
私の手には余るけれど
おまえならきっとお気に入りだろう
空は晴れている
雲のかすみも無く
向うの山が望める
この季節はまた来るだろうか
「童」