「二つの背中」
待ってください
待ってください
呼ぶ人がいる
呼ぶ人が追うは背中の人
背中越しに走馬燈のともしが生んだ影のほのめく
背中の人は背中でしかない
たとえ振り向けどまた背中
振り向けど
振り向けど…
背中の人は呼ぶ人に花の実をあげられないで
呼ぶ人は背中の人に水をやれないまま
いつまでも互いは背中どうしの熱でぬくもる
愛とは肯定のみでなし
互いは互いに泣きながら
哀しい涙ばかりを落す
両手で顔を覆って
情のすき間より伝う雨
雨はいづれ命を呼ぶと
さう互いに信じたまま
二人は虚空に呼掛ける…
また、今日も
「二つの背中」