「陰陽」
脳髄から地面まで
汲み上げポンプのように体貫く軸がある
柳の根本のような
正直な軸
その軸から発光される
ぞわぞわとした疼き
たちまちに軸は切なく喘ぎ
星は明滅を繰りくりかへしては
熱い吐息を拳に吐いた
吐息は 炎
かなしい手を爛れさせる
歯がみの痕残し
その人の手は黒い炭にされてしまった
なおも飽き足らずもがけるひとは
黒ずみの手にすり寄り
その腕を両脚で挟む
やさしき檻の感触
包み込む牢獄のにほひ
鎖の冷たさ
いずれも泉の撫でるさま
その人は思わずもう片方の手に水結ぶ
もがける人がそれを喰った…
やさしき牢獄、首締めの銀鎖
耳の奥が鋭く痛み
脳は溶けて呑みほされよう
もはや陽光は
寒き夜の支配者に非ず
「陰陽」