はきだめ集

自分の言葉で喋るって難しい。こうして書いてる文章もどこまでが自分の言葉かなんて分からないし、誰かの受け売りですか?と聞かれても「ここに私の言葉なんてありません、すべて人から奪ってきたものなので。」としか答えられない

火を付けることすら億劫になった煙草は湿気った空気のせいで日に日に不味くなるし 副流煙でこのまま死ねたらよかったのに、なんて考えている間に君は煙と一緒に換気扇の下へ逃げていく。半袖で外に出るのが肌寒く感じるようになってきた頃、この寂しさが心地よくてこのままずっと独りにしておいてと暖かい声のする方に向かったらそこにあったのは火でも煙でもなく割れた花瓶だけ

その名残をお守りのように抱える私は墓守にでもなったのかな

またひとつ安らかな死から遠のいて

生きてるだけで救いになる人の存在って大きかった。押し付けがましい祈りを捧げながら生きていたけれど今じゃそれも何のためのものなのか分からない。幸せに過ごしていてくれるだけで良かった頃の救いの無さが消え、空っぽの祈りだけが残って、散らばった言葉と一緒に海に流れていった時 しがむように掴んだ手の温かさを思い出しながら浅い眠りにつく。

はきだめ集

はきだめ集

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-21

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted