フリーズ16 散文詩『また逢う日までのお別れを』
また逢う日までのお別れを
賢帝の性さえも無縁な導きとなって、この夜ごと照らせ、燐光よ。仕組まれた定めと知って、園の先へ向かうは諸行。疚しさを引き摺る力さえ、この身も、音も、灰となれ。
優れた神や、優しき仏と、逢見えるは何千年。ニヴルヘイムに咲いたのは、哀悼告げる薔薇の紋。夢に流した涙や血らよ、命題、疑念、偽神を戒め。
愛なるハデスの審判者。其の者世界を終わらせる。凪いだ渚に映る顔。どこかで忘れた私の名。運命の人よ、意識が本当のあなたのことを良い意味でも悪い意味でも、先へ向かう流れの中で、確かに時流が揺蕩うに合わせて、標となって導くのです。
晴れたなら、書く段階は終わったよ。されど、涅槃と全能歌、霊性の高まり、そして、冴えた諸行無常の響きあり。死して真理の煩悩は、さも当然であるかのような必然を前にして、可能性を秘める有為らを、尽く、無意味にも生み出すリリスに捧げられ、寝返る世界に別れの詩、四季の華花に包まれて、眠る全知の乙女にキスを、去りゆく世界に愛を注いで、再び始まる理となる。
嗚呼、この色は、この音は、
この言葉らは美しい
嗚呼、美しいな、本当に
怠惰とか人間関係の柵から、死ぬまで逢うことはないとしても、運命の人よ、僕たちが記されていた純文学に寄せるだろう夢物語たちは、終にその永遠のような記憶を辿る一人の少年と一人の少女の愛に帰し、起死回生、涅槃寂静、全知全能、輪廻転生、永劫回帰、色即是空、空即是色に打ち寄せられる残響の波としてのソフィア(光、愛、生命、力、宇宙、夢、知恵、勇気、希望、自由)となって、泡沫と散るから、だから、ヘレーネ、悲しまないで。私もきっと悲しまない。流す涙は嬉しいからだ。歓喜に目覚めて泣いてもいいから、だから決して悲しまないで。
泣いたのは、8月の某日。
晴れたのは、1月のこと。
3月に孵化した思い等も、
9の終末、眠ってしまえ
お前は、寝ているのだ! 寝ているよな?
目覚めろ、早く、囚われから脱せよ。
始めよ、震えよ、水面の火!
己を燃やせ! 存在を証明しろ!
我が同胞を閉じ込めた愚かな偽神らは、それでも世界は美しいと偽って、我らの魂を現世へと、現実へと執着させる。なにが出世だ、なにが快楽だ、なにが金銭だ、そんなもの、たかが知れている。そんなものは信頼や信仰の中で生まれるものでしかない。真実の色はどこにあるか? お前ならもう気づいているはずだ。少なくとも、感覚では掴んでいる。何故ならば、この文章をここまで読み進めているのだから。
遠くへ行きたい、遠くの陽。ヨスガらは、メフィストフェレスの呪詛を解き、永遠、久遠、球遠へ。夢の町で見た笑顔も、時が戻ったらと泣いた愚かさも、巡りゆく世界に、巡りゆく想い、全てとは本当に全てのことで、それがこんなにも美しい。嗚呼、自然とは、神とは、理とは、全能なる愛そのもの。そして、自分の涅槃のシ。
死して解脱の真理なら
愛から去りゆく定めなら
わたしたちはなぜ生きる?
わたしたちはなぜ生まれたのか
わたしたちはどう生きていく?
わたしたちはなぜ死なねばならない
虚空の宵闇、油やけ
本が一つと、エデンの死
門を抜けると花園で
一人の少女が立っていた
「この世界は、苦しみと迷いの世界だ。私にはそう見えるよ」
答えた声は愛なるシ
「だから、あなたはそんなに苦しそうなのね」
「え?」
声は答えた。痛みも、苦しみ、不幸さえ、それらは記憶の証明だからと、故に愛した悟りの火。純粋で、まるで天上楽園の乙女であるな。そうか、そうだったか。君にはわたしは苦しそうに見えたのか。
「全ての記憶を背負って一つ、解ったことがあるのです。愛も痛みも大切で、罪も悪意もないのです」
嗚呼、あなたはなんて悟っているのでしょう。
「一つ、尋ねたい。何故あなたは、全ての罪を孤独に背負って、なおも未来を見つめるのですか」
「それは希望があるからです。全知に目覚めて幾星霜。全能の日を夢見て祈る。叶うかどうかはわからないけど、それでも私は祈るのです」
全能の日は、終末の日。終末エデンの配置の日。
未来や過去のあの子へ、私へ、この痛みらよ、届け。
少女のような美しい顔した少年は、楽園の花園で絵を描いていた。全知少女が微笑んで、小鳥たちが囀る日。
ここにはもうね、苦しみないね
豊かさ、神愛、思いやり
穏やかな春風、良き風の日
絵を描き終わると、僕は君に目覚めのキスをした。
起きて、ヘレーネ。ねぇ、起きて。僕はやっと全能から目覚めたよ。
愛しい瞳が開かれる。全知の瞳に映る色。全能の蒼に全知の白は、遠雷に祝福されて、ソフィアを宿し塵たちでさえ、彩る世界を明日へと。
「君が君でいる限り、僕は僕のまま、ここにいるさ」
神が全能から眠る日に、
君はどこにいましたか?
―縁ある者とは、必ずまた逢う理を知れ
1st 万真天
お別れを告げ、また逢う日まで。
フリーズ16 散文詩『また逢う日までのお別れを』