還暦夫婦のバイクライフ 7

ジニー、富士山を見たくなる 3日目

ジニーは夫、リンは妻の、共に還暦を迎えた夫婦である。
 朝7時、リンは目を覚まし、布団から抜け出して窓のカーテンを開けた。外は明るくなっていたが、小雨が降っている。外の景色をしばらく眺めてから、テレビをつける。リモコンを操作して天気予報を探すが、タイミングよくやっている局が無かった。ふうっと息をついて、テレビのスイッチを切る。
「おはよう」
ジニーが目を覚まして、起き上がる。
「おはようジニー」
「雨降ってる?」
「うん。でも、もうすぐ止むかも。空が明るくなってきた」
ジニーは窓際に行き、外をのぞく。小雨が降っているが、リンの言う通りもうすぐ止みそうだ。
「そう言えば昨夜、向こうの山の中腹が明るかったけど、今見たら高速道だね」
「その少し下に、鉄道も通ってるわ」
「鉄道?あんな山の上に?・・・本当だ。列車が走ってきた。駅もある。家があるのか?あるな!何だろう」
「あのあたりにうばすての棚田があるみたい。パンフレットに載ってたわ。昔はあのあたりに農村があったんじゃないの?」
「ふーん、いずれにしてもあの高さまで道も鉄道も上げないと、向こうには行けないのか。千曲市って、盆地なのか?」
「そうかもね。さて、準備したら朝ごはん行くよ」
二人は手早く着替えて、店開きしたままの荷物をまとめる。宿でもらった段ボール箱に、着替えや今まで買ったお土産を詰める。自宅に宅配するのだ。鞄のスペースが空いて軽くなった。布団を片付けてから、宴会場に降りる。ここはバイキング形式ではなく一人ひとりに朝食が用意されている。昨日の福田屋さんに負けず劣らず、多彩な料理が目の前に並んでいる。
「リンさん、食べ切れる?」
「大丈夫、いけるよ」
ジニーの心配をよそに、リンはずらりと並んだ料理をゆっくり味わい、完食した。熱いお茶を頂き、一息ついてから席を立つ。二人はロビーに行き、お土産を物色した。
「リンさん、昨日のそばはおいしかった。仲居さんに聞いたら、売店に置いてあると言ってたよ。多分これだな。あと、うずらもちもね」
「はいはい」
ジニーはそばを6人前と、うずらもちをひと箱買った。それを持って、部屋に帰る。段ボールの中の先客を少し寄せて、買ったばかりのお土産を詰め込んだ。
 荷物のパッキングを終え、忘れ物が無いように部屋をぐるっと見て回る。それから二人で手分けして鞄と段ボール箱を持って、ロビーに向かう。フロントで段ボールを閉じてもらい、あらかじめ記入しておいた送り状を張り付ける。それをフロントに預け、清算をして外に出た。
「あ!」
「あー!」
二人が同時に声を出す。さっきまで止んでた雨が、再び降り始めたのだ。
「なんとまあ!今日はもう降らないと思って、カッパ片付けたのに」
ジニーがぼやくが仕方ない。二人は一度パッキングした荷物を解き、レインウェアとブーツカバーを引っ張り出した。
9時過ぎに出発する予定が、結局9時30分出発になってしまった。県道77号を北上し、R403を右折して千曲川を渡る。橋を渡ったすぐの堤防の道に左折して、道なりにしばらく走る。その後R18に合流し、再度千曲川を渡る。
「ナビ様は今日もご機嫌よさそう?」
「う~ん、音声がイマイチ聴き取れないなー。インカムの設定変えないとだけど、パソコンにつながないとダメなんだよね。あ、この先左折だって」
「左折?県道35号だね」
二人は今日もナビに導かれて、善光寺を目指していた。県道35号はR117号になり、そのまま犀川を渡る。このころからナビが怪しくなってきた。いろいろな道路が交差して、ルートが無数に選択できる状況になると、日和見なルートを指示し始めるのだ。次々に変わる指示に、リンが困惑する。
「ジニー、今日はナビ様あかん。こちらから大雑把に指示するから、後は何とかして」
「ええ~っ。じゃあとりあえず、善光寺方面に行きますよ」
ジニーは時々出てくる道路案内標識を頼りに、長野市内を走る。前日見ていた地図をぼんやりと思い出し、後は勘で走る。やがて県道37号に入り、善光寺の西側にたどりついた。そのまま北側へ回り、東側に抜けて目的の市営無料駐車場に到着した。
「リンさん、着いた。あまり迷わずにこれたね。良かったぁ」
「でもここ、二輪車NGじゃないの?」
「どうだろう。特に禁止の表示は無いし、それに雨がしのげるのって、ここしかないよ。まあ、入ってみよう」
ジニーが先導して、1階駐車場に入った。中は満車だったが、端の方に広くなっている所を見つけた。
「リンさん、ここに停めよう。邪魔にはならないから」
「うん。ダメだったら何か言われるでしょ」
二人は駐車場の端にバイクを止めた。そこで雨支度を解いて、レインウェアとブーツカバーをバイクの上に広げて置いた。ジニーが携帯の画面を見る。時間は10時20分になっている。身軽になった二人は城山公園を突っ切り、長野県立美術館へ向かう。ちょうどジブリ展をやっていて子供連れの人達で混雑していたが、そこが目的地ではない。ジニーとリンは、隣にある東山魁夷館へ入っていった。
 東山魁夷館を出たのは12時30分だった。ジニーは作品に圧倒されたようだ。
「東山魁夷って、いろいろなタッチと色使いで描いていたんだ。知らなかった」
「ジニーのお気に入りは、青い作品だもんね」
「うん。今日は暖色の作品が多く出ていたね。でも、やっぱりすごい絵だった」
ジニーはすっかりご機嫌になって、リンと二人で語りながら善光寺に向かって歩いていく。
「ところで、おなかすいた」
「じゃあ、仲見世通りの方にいってみようか。お参りしてからね」
善光寺は今年御開帳の年らしく、特別な御朱印が販売されていた。リンはそれを見つけて早速買っていた。ほかにもお守りを数点購入している。お土産にするつもりらしい。お参りを済ませた二人は仲見世通りへ向かう。そこで一つ目に見つけた蕎麦屋に入る。混雑はしていたが、待つこともなく席に座り、オーダーする。やがて注文したお蕎麦がやって来た。それを手早くいただき、満腹になった所でしばらくお土産屋を見て回る。
「ジニー、おやきのお店がある」
「え、今ご飯済んだとこで、いける?」
「せっかく長野に来たのにおやきは頂かないと」
「じゃあ、半分ずつね」
ジニーは野沢菜入りを一つ買って、半分ずつ二人で食べた。
「おいしいー」
リンがにっこりと笑う。
「さてリンさん。そろそろ動きますよ。14時40分になった」
「どう動くの?」
「長野ICまで行って、長野自動車道を南に向かって、岡谷JKTで中央道に乗り換えて、名古屋で東名に乗り換えて、多賀SAで一泊する予定。おおむねここから350Kmくらいかな」
「時間は?」
「4時間くらい見積もってる。到着予定19時から20時の間かな」
「うーん、もう少し遅くなりそうね。休憩していたら、5時間はかかるんじゃない?」
「そう言われればそうかも。まあ、のんびり行きましょう」
ジニーは呑気なことを言った。この後、大変な目に遭うとは二人とも想像すらしていなかったのだ。
 バイクまで戻って、二人は雨道具を片付ける。この後、雨は降らない予報なのだ。19時頃中央道の伊那付近で雨の予報だが、その時間には通り抜けているので問題ない。
「さて、今日のナビ様頼りないけど、長野ICまで使うわよ。私が前走るから」
「オッケー、では出発」
城山公園駐車場を出発して、長野ICを目指してナビの指示通りに走る。県道399号に出てすぐに左折。
「ん?」
ジニーが?になるが、自分の勘よりナビ様のお告げを優先することに決めていたジニーは、何も言わない。ナビはどんどん指示を変えて、ついに西向いているのか南向いているのかわからなくなった。
「ナビ様この先右折だって。あ、通り過ぎた。あの狭い道だったの?リロードした。このまま道なりって言ってる」
「あ~これは、完全に迷走してるな。どうするか」
迷いながら走っていると、道路案内標識が出てきた。須坂長野東ICの文字が見える。
「リンさん、次の交差点右折して」
「え?大丈夫?」
「うん。とにかく高速に乗ろう」
ジニーはリンと交代して前を走った。交差点を右折して3Kmほど走った所でIC左の標識があった。交差点を左折して県道58号に乗り換え、橋を渡って1KmほどでICが見えた。
「リンさん、行きついた。長野ICじゃないけどね。その前に給油するよ」
「うん」
左にあったGSに入って、給油する。それからICまで行き、長野方面目指して走り始める。ジニーがほっとする。
「今日のナビ様、ご機嫌よろしくないね」
「うん。指示が聞き取りにくいし、次曲がる?と思っているうちにリロードするし」
「でももう、高速乗ったから一安心だ。ひたすら走っていけば、到着するから」
「うん。ジニー次のSAで休憩しよう」
「オッケー」
それから少し走って、うばすてSAで休憩する。
「これ、宿から見えてた高速の明るかったところやね。SAだったのか」
「良い景色ね。千曲市が一望できる。すぐ下に、JRの駅もあるんだ」
しばらく景色に見とれていたが、時計は16時20分を示していた。
「リンさん行こう。雨に降られるの嫌だし」
「そうね。右手からやばそうな雲が来てる。追いつかれないうちに行こう」
ゆっくり休む間もなく、二人はバイクを発進させる。松本市まで走った所で、ジニーが案内板の渋滞情報に気付く。
”中津川IC~飯田IC工事中渋滞12Km200分”
「?12Km渋滞・・・200分ってなんだ?」
ジニーは、表示の意味が理解できなかった。
「リンさん、今案内版に、渋滞情報が出ていたんだけど、見た?」
「え?見てなかった。なんて?」
「中津川IC頭に12Km渋滞だって。その横に200分ってあったけど、あれ何だろう」
「中津川?これから通る所かな?」
「確かそうだと思う」
「ふーん」
そこから岡谷JKTで中央道名古屋方面へ乗り換える。しばらく走ると、電光掲示板にさっきと同じ渋滞情報が表示されている。しかも210分となっている。
「ジニー、見た。210分は通過時間じゃない?3時間半だね」
「やっぱり。たった12Km走るのに3時間半ってなんだそりゃ。リンさん次のPAで止まろう。情報収集しないと」
二人はややスピードを上げて、次のPAを目指した。やがて出てきた辰野PAに立ち寄る。バイクを止めた二人はインフォメーションに行くが、すでに時間外で閉まっていた。ジニーは売店の人に声をかける。
「すみません。この先渋滞しているみたいなんですが、どこか下道で抜けれるところありますか?」
「え?ちょっと待って」
店員さんはわざわざ外にある情報案内板の所まで行って、その前で話をしてくれた。
「あ~これね。200分だねー」
「これって、本当に200分もかかるんですか?」
「かかるねー。ここからだと、R19かR153で行くしかないけど、うーん」
店員さんも腕組みして考えている。そこへ名古屋に帰るというご夫婦が、話に加わる。
「これはちょっとね。私たちは下に降りて走ります。R19号は大渋滞すると思うから、R153ですかね。私たちは途中で猿投に乗って帰りますよ」
「そうですか。リンさん、僕たちもR153を行こう。結構距離あるけど、高速で3時間以上缶詰になるのは嫌だ。しかも雨に当たるかもしれないし」
「そうする?ええよ」
ジニーは店員さんにお礼を言って、スマホを取り出し、地図アプリを呼び出す。
「えっと、この先駒ヶ根ICで降りるのがR153に一番近いな。よし、リンさん行こう」
「ずいぶん手前で降りるね。まあ、いいけど」
二人はバイクにまたがり、18時にPAを出発した。そこからしばらく走って、駒ヶ根ICで高速道を降りた。県道75号からR153バイパスに乗り、そのまま豊田市目指して南下する。
「リンさんちょっとコンビニ」
「どしたん?」
「腹減った。あと、宿に連絡する」
「はいはい」
程なくジニーは左手にコンビニを見つけ、より道する。そこで今夜の宿に、22時過ぎると連絡した。
 日が落ちて、あたりはすっかり暗くなった。おにぎりで腹の虫を押さえた二人は休憩もそこそこに再び走り始める。道路案内標識に、豊田市120Kmとなっていた。
「ジニー、120Kmだって。松山から愛南町まで夜、下道を走るような感じだね」
「うわー、それ、すごく実感できる。絶対やらんよね」
「今からやるんだって。えらいこっちゃやで」
「リンさん。これ、何かの修行かな?」
「あははは、楽しいねー」
僕はちっとも楽しくないやとジニーは思う。
 飯田市まで走って、GSで給油する。まだ余裕はあるが、この先GSがあるのか、あっても営業しているかわからない。これから山越えするのに、ガス欠は洒落にもならない。いつものように2台まとめて給油する。12L入った。
「ここで満タンにしとけば、大阪ぐらいまでは走れるからね」
ジニーが安心したように話す。
 GSを出発してすぐ、標識が立っていた。豊田市まで106Kmとなっている。
「ジニー、宿には何時って言ったん?」
「22時30分くらいと言った」
「今何時?」
「えーと、19時ちょっと過ぎ」
「無理じゃない?」
「無理だね」
「とにかく前向いて走ろう」
飯田市を抜け、高速道の下を通る。見上げると、渋滞にはまった車列が見えた。全然動いていない。
「あれにはまるのは、やっぱり嫌だなー。下道だと前向いて走れるからいいや」
「でも、遠いよー」
そうこう言いながら走るうちに、いよいよ山道になってきた。行き交う車もまばらで、真っ暗な中、ヘッドライトだけが頼りだ。
 浪合トンネル手前で、シールドに雨粒がバチっとはじける。あっという間もなく、雨がざあっと降り始めた。
「わあ、リンさん降ってきた」
「大丈夫、雨しみてこないから」
ジニーはスピードを落とす。暗くて見づらい道が、雨でますます見えなくなる。路面は完全にウェットで、タイヤのグリップ感が無い。危なくてスピードを上げられない。雨に打たれながら治郎坂峠を越え、下りの道をゆっくり走る。
「リンさん、この先に道の駅がある。止まるよ」
「オッケー。休憩しよう」
程なくして現れた道の駅信州平谷へ、バイクを乗り入れる。駐車場は真っ暗で、一台も止まっていない。随分とさみしい所だ。例にもれずここにも二輪車用スペースがない。二人は屋根付きの身障者用スペースを借りて、バイクを止めた。ヘルメットを脱いで見合わせた顔は、お互い疲労の色が濃く出ている。ジニーは鞄からレインウェアとブーツカバーを引っ張り出す。それを持って、明かりがついている休憩所に向かった。誰もいなくて貸し切り状態だ。ベンチに脱いだ上着を引っ掛け、水気を払う。
「うーん、疲れた。やっぱり下道120Km手ごわい。おまけにまた雨だ」
「まだ半分しか来てないわよ。しかも、豊田市から宿まで、さらに160Kmあるし」
「うぇ~まいったなー。大体なんでこんな休日に工事やってるんだろう。予定通りだったら雨にも当たらないし、そろそろ宿に着く時間なのに」
ジニーがスマホの時計を見ながらぼやく。時間は20時を過ぎていた。
「そう?まあ、大変だけど、私はこの状況を楽しんでるよ?」
「ええっ。リンさんはメンタル強いなあ」
ジニーが感心する。しかし、前向きな言葉を聞いて、少し元気を取り戻したようだ。
「ぼやいていても仕方ない。カッパ着て、行きますか」
二人は休憩所でレインウェアを着て、ブーツカバーを装着する。雨対策をしっかり行って、バイクに向かう。
「それにしても、櫛谷のジャケット優秀だわ。中に全然水がしみてない。結構降られたのにね」
「防風ジーンズは、しっかりと濡れているよ。防水じゃないから仕方無いけどね」
「宿に着くまでに乾くんじゃない?体温で」
そんな話をしながらバイクにまたがり、雨が降る中スタートした。程なく標識があり、豊田市69kmとなっていた。
「あと1時間半くらいか」
ジニーがつぶやく。
 どこまでも続くR153を、雨に打たれながらゆっくりと走る。時々後ろから早い車が追いついてくる。そのたびに道を譲り、先に行かせる。
「晴れていたら、あんな軽ワゴンに道を譲ることもないのになあ」
「何言ってるのジニー。そんなに走られたら私はついていけませんよ」
「そうか、そうだな。そういうのはもうやめたよな」
ジニーは改めて、自分の歳を思い出す。いつまでも若くはないのだ。
 ひたすら走り、やがて豊田市が近づくころ、雨が止んだ。空を見上げると、雲の間から所々星が見える。
「ジニー、星が見える」
「うん、それにもうすぐ豊田市だ」
「ここからどうするの?」
「どこかに東名の入り口があるはずだ。そこから高速に乗るつもり」
「わかった」
さらに走ると、猿投グリーンロード入り口が見えた。あのご夫婦が言っていた道だ。そこを通り過ぎ、少し走った所で東海環状入り口があった。ここでジニーが痛恨のミスをする。東名高速しか頭になかったジニーは、ここをスルーしてしまったのだ。それから40分間、二人は豊田市を徘徊してしまう。すでにジニーもリンも、正常に判断する気力も体力もなく、途中で起動したナビにも振り回され、とうとう住宅地の真ん中で止まってしまった。
「リンさん、まずは自分たちの位置を特定しよう」
「うん」
リンが改めてナビを呼び出す。そして、二人で画面を確認する。
「ジニー、ここに豊田松平ICがあるけど」
「あ~ッ、今気が付いた。東海環状は東名につながってるんだ。僕、あほや!」
「はいはい、あほなのは昔から知っていました。で、どうするの?」
「このICに行こう。ナビ様の言う通りで」
「わかった」
リンが前を走り、ジニーが続く。さらにナビに振り回されながら、やっとの思いでICから高速に乗った。豊田東JCTで新東名に乗り、さらに豊田JCTで東名に乗り換える。その先にある豊田上郷SAに止まり、休憩する。時間はすでに、22時50分になっていた。ジニーは宿に電話し、到着が1時くらいになると伝えた。
「リンさんカッパ片付ける」
ジニーはリンの雨装備一式を預かり、手早くまとめて鞄に片付けた。続いて自分のものも片付け、店舗に向かう。
「ジニー何か食べる。おなかすいた」
「夕食おにぎり1個だもんね。それにしても疲れた」
「ご飯ご飯~」
フードコートをのぞく。夜メニューがあって、安くなっている。
「僕カレー」
「私アジフライ唐揚げ定食」
それぞれオーダーした料理を受け取り、席について食べる。
「やっとここまで来た。あとは高速道一本道だから、迷わないよ」
「今日は最後までナビ様にやられたねー。あとどれくらい?」
「150Kmくらいだから、1時間半くらいかな」
「まだまだあるねー」
リンは疲れた顔をしてつぶやいた。
 遅い夕食を済ませ、二人は再び走り始める。東名を走り抜け、名神高速を多賀SA目指して一気に走る。そして0時15分、やっとの思いで到着した。バイクから荷物を下ろし、予約しているレストイン多賀のフロントへ向かう。チェックインして部屋のカギをもらい、荷物を持って部屋まで歩く。部屋で荷物をほどき、着替えを用意してすぐに大浴場へと向かう。
「リンさん、いつも通り、先に部屋に帰っているから」
「オッケー」
ジニーは風呂につかり、ゆっくりと手足を伸ばす。
「今日は疲れた。ナビは僕のバイクでも見れるようにせなあかんなー」
今日の反省をしながら、ナビの有効性が分かったジニーだった。

還暦夫婦のバイクライフ 7

還暦夫婦のバイクライフ 7

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-28

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