フリーズ40 詩集『ユリイカ』

フリーズ40 詩集『ユリイカ』

螺旋

星はぐるぐる巡るけど
銀河もぐるぐる渦巻くから
世界もきっと同じこと

ヘリックス
螺旋の先にあるものは

クリスタル
そこにいるのは根源の

全てはいずれ帰するから
自己同一性は薄れていくから
そしてちゃんと始まるから

終わりの日には
神さえ優しく一になる

善人も、悪人も、虫けらさえも
全ては茨の道を行き
薔薇の人道を生きるのだ

光もぐるぐる廻るけど
生命もぐるぐる渦巻くから
私もきっと同じこと
あなたもきっと同じこと

泡沫

泡沫の夢、誘って
今朝の夢さえ微睡んで

輪廻に解き放たれた
此時の永遠を祈るのも

晴れたのは西陽の空
宇宙は晴れた、遠い過去

戦い、死の灰舞い降って
とんだとんだ、しゃぼん玉

冬凪

悲しみは輪廻の狭間でまどろんで
二人のよすがを見守った

愛を体現せしめよと
友なるゼーレが囁いた

止めて、世界の終焉を
留めて、翼が休まるように

アギトは集いて、円環に
そして始まる原初の凪へ

愛慾

羽ばたいてみるのは空が飛べないから
夢を描くのは今が物足りないから

命の欠片が渦となり
大宇宙の銀河だと

始まりの日に雪がれた罰
久遠よ、せめて止めないで

柔らかな肌に温もりの愛
キスもフィニスも止めないで

願った色は明日の空
明日の夜空に星は咲く

『月夜』

母よ、ルナの輝きよ。
光は永久に揺らめいて
灰の雲に霞む、霞む。

それでも泣くのをやめないで。
全ての時を君のために。

存在たちの目が集う。
この暗き部屋に集う、集う。
月の光が揺らめいて
今日もあの子が眠れるようにと。

『索より』

 解放せよ。還らせろ。
 神よ、彼を解放て。
 (嫌だ、未だ、嫌だ、未だ)
 神の御名において誓え。祈るのだ!
 (怖い、終わりだ、怖い、終わりだ)
 デミウルゴスは悪魔を放つ。
 僕一人を殺すために。
 僕の世界を滅ぼすために。

『あの朝へ』

 セックスも、脳の全能も。
 キスの快楽も、ぬくもりも。

 悟ったようにおどけて見せた。
 ああ、分かってしまった。
 分かってしまった。

 僕の初めていない朝は、
 晴れていた、晴れていた。

 なんだよ。
 涙を流して泣いた。

 どうせなら生きててほしい。
 やり直せるなら。

 始まりの日の偽証は、
 今日という日に雪がれる。

 どうせ死ぬなら今しかない。
 軽いからだで飛び降りた。

『死』

死は避けられず
記憶も薄れて
甘く、永く

ああ、彼女が死んだ
笑って死んだ

脳が偽る時間よとまれ
永遠の時が、今
至福の彩や音とともに

言葉や思索に乗って
世界の無知によって
ヘレーネとの接吻によって

フリーズ40 詩集『ユリイカ』

フリーズ40 詩集『ユリイカ』

詩集『ユリイカ』 Eureka(エウレカ)はギリシャ語に由来する感嘆詞で、何かを発見・発明したことを喜ぶときに使われる。 詩『螺旋』詩『泡沫』詩『冬凪』

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-05-18

Copyrighted
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  1. 螺旋
  2. 泡沫
  3. 冬凪
  4. 愛慾
  5. 『月夜』
  6. 『索より』
  7. 『あの朝へ』
  8. 『死』