アイスピックの少年。
ひゅん、ひゅん、がっ、がっ、がっ。
どす黒い曇り空で薄暗くなった路地裏から、不気味な音が聞こえてきた。
ひゅん、ひゅおん、がっがっがっ。
風を切るような音とと、固い物に固い何かを打ち付ける音。どんどん激しくなっていく。
路地裏を進む。
音の出どころに近付くにつれて、紫色の蛙の数が増えていっているような気がした。
ひゅうおんっ、ひゅおんっ、がっ、がっ、がっ!
目付きの悪い少年がアイスピックを振るっていた。
彼の足元には大量の蛙がいた。少年に踏み潰されたのか、ぺしゃんこになって、肉片と臓器と体液が泥濘んだ地面と混ざり合っていた。
「見るな、見るな見るな見るなぁっ!」
僕に向かって叫んでいるのかと思った。見せ物じゃないよって意味で。でもどうやら、違うようだった。
アイスピックで空を切る先に、アイスピックで壁を突く先にいる何かに向かって、叫んでいるみたいだった。
「潰してやる! 潰してやるからなぁっ!」
半狂乱状態のアイスピックの少年。彼の足元には、食べかけの林檎が転がっていた。
ぞっとするぐらい、赤く熟れた林檎だった。
アイスピックの少年。